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00:00深い海の中
00:10この暗く冷たい世界に生きるモンスターたちの姿をお届けする2回シリーズ
00:19今日は後編です
00:22この世界に君臨する巨大生物たちそして捕食者たちがいます
00:39彼らの狩りは独特です
00:49その姿は時に神話や伝説となって語られてきました
00:54最新の研究成果をもとに貴重な映像とCGを駆使してお届けする
01:05これまでほとんど伝えられてこなかった深い海のモンスターたちの生態
01:11前編では捕食者たちに注目しましたが次の主役となるのは巨大生物です
01:22想像を超える巨大さと恐ろしい生態
01:26そこにはどんな進化の歴史が秘められているのでしょうか
01:31さらに世界で最も長生きする生き物も登場します
01:36大王グソクムシです
01:39わあ何ですかこれは
01:44貪欲な捕食者や伝説の怪物の謎に迫ります
01:52初めて見た時の気持ちは
01:56まさについに来たという感じでした
02:00水深1000メートルを超えるような深海には巨大な生き物が潜んでいます
02:19しかしその姿を見ることはまれで
02:24長い間人々はわずかな目撃談を聞きながら想像を巡らせていました
02:31私たちが海に心を惹かれる理由の一つが巨大生物の存在です
02:42例えば船乗りたちによる巨大なイカの目撃談が何世紀も前から語られてきました
02:50そこから船を飲み込み深い海へ引きずり込むという恐ろしい怪物クラーケンの伝説も生まれています
02:5919世紀半ばある船長はアフリカの沿岸で3人の船員が巨大な生き物に捕まったという記録を残しています
03:11しかしそうした話の証拠を見つけることは困難でした
03:161873年カナダのニューファンドランド島の漁師が大王イカと遭遇しました
03:26漁師が書き残した記録によると
03:29彼は海面に何かが浮かんでいるのを見つけ
03:33生きているように見えたので棒でつつきました
03:36するとその生き物はたくさんの腕をボートに絡みつかせ
03:41噛みつこうとしてきたので彼は斧で抵抗しました
03:45そして6メートル近くもある長い腕を切断しました
03:50キリンの背丈に近い長さです
03:53大王イカの存在がついに証明されたのです
03:59その後大王イカの完全な全身標本が初めて採集されたのは
04:06およそ130年後
04:082004年のことでした
04:11それは現在ロンドンの自然史博物館の地下にあるタンクに保管されています
04:18全長は13メートル
04:22重さは500キロ以上になります
04:25性別はメスでアーチーと名付けられました
04:29学名のアルキテウティスにちなんだ名前です
04:33保存を担当しているのはキュレーターのジョン・アブレットです
04:38完全な標本が手に入ることは非常に稀です
04:452004年に南大西洋のフォークランド諸島から連絡を受けました
04:50漁師の網に大王イカがかかったというのです
04:55捕獲地点は水深200メートルほどで
04:58大王イカが上がってこられるほぼ限界でしょう
05:01現地で冷凍してイギリス本土に輸送し
05:054日かけて解凍しました
05:07体にアンモニアが含まれていて
05:10尿のような匂いで大変でした
05:13そして今はロンドン自然史博物館の地下のタンク室で保管されています
05:20アーチーはいわば貴重な芸術作品のような存在ですから
05:25大切にしています
05:27謎に包まれた大王イカを詳しく調べることがついに可能になりました
05:34この長い方の腕を触腕といいます
05:38先端が膨らみ大きな吸盤が並んでいます
05:42吸盤の直径は2.5センチにもなります
05:46吸盤の縁にはギザギザの硬い刃のようなものがあります
05:51これを獲物に食い込ませ確実に捉えるのです
05:56根元へ向かって見ていくと
06:02長い2本の触腕の他に短い8本の腕があるのが分かります
06:08これらは触腕とは異なる特徴を持っていて
06:12より筋肉質です
06:14そして吸盤が全体にあります
06:17触腕は先端にしか吸盤がありません
06:20これが頭部で腕の付け根に口があります
06:25後ろに目があり目の下に脳があります
06:29脳はドーナツ型で真ん中を食べたものが通り抜けます
06:42これは大王イカのくちばしです
06:45とても硬くとがっています
06:48獲物の骨や肉貝殻など何でも切り裂けます
06:53獲物を取る時はまず大きな食腕で素早くつかんで引き寄せ
06:59より強い他の腕で固定し
07:02くちばしでかじります
07:03少しずつかじって細かくちぎり飲み込むのです
07:09完全な標本は非常に貴重なため
07:16内部の構造を調べるのにはアーチーではなく
07:20他の不完全な標本を使います
07:23これはカナダから来た別の標本です
07:28この部分に全ての内臓が収まっています
07:31人の胴体のようにです
07:33次はエラです
07:36大きなエラが2つあり酸素を取り込みます
07:39心臓は3つです
07:42左右のエラにも小さな心臓があるからです
07:45この胴体の部分いっぱいに水を吸い込み
07:50勢いよく噴射して素早く進みます
07:52この管のような部分を水が通るんです
07:561000メートル以上の深海にも潜り
08:03150メートルより上層には上がってこないと考えられています
08:08ダイオウイカが海面に現れるのは死ぬ間際だけ
08:141873年に漁師たちの前に姿を現したのは
08:19死を前にしたもがきだったのかもしれません
08:22アーチーのような完全な標本からも
08:29生きていた時の行動のすべては分かりません
08:31積極的なハンターなのか
08:37じっと獲物を待つのか
08:39そうしたことは生きている姿を見なければ分からないことでした
08:43海の生物のほとんどが暮らす
08:50太陽の光が届くサンライトゾーンに比べ
08:53ダイオウイカが暮らすのは
08:55光がほとんど届かない深海
08:58トワイライトゾーン
09:00そしてミッドナイトゾーンと呼ばれる領域です
09:04深海を探索し
09:10ダイオウイカの貴重な映像の撮影に成功した一人が
09:14海洋生物学者のネイサン・ロビンソンです
09:18イギリスの深海探査の拠点である
09:21国立海洋学センターで
09:23彼の話を聞きました
09:25どうやって映像を撮影したんでしょうか
09:29電気仕掛けのクラゲを使いました
09:32ダイオウイカの視点で考えたんです
09:36彼らの目は動物の中でも最大級で
09:39直径30センチほどもあります
09:42視覚に頼っているんです
09:44深海には青い光を回転させるように発するクラゲがいます
09:49自分を狙う捕食者の天敵となる生き物を引き寄せて
09:54身を守るためです
09:56私たちはこれと同じパターンの光を出すことで
10:00ダイオウイカを引き寄せたのです
10:02わずかな間ですが
10:05暗闇の中から蛇のようなものが現れるのが見えますね
10:09この時点までに120時間撮影して収穫なしだったのですが
10:17ついに姿を現しました
10:19触案を広げて仕掛けに絡みついてきたんです
10:24まさについに来たという感じでした
10:27水深はどのくらいですか
10:33750メートル
10:35意外と慎重な動きですね
10:38ダイオウイカは獲物の味を確かめて食べられるかどうか判断します
10:44ダメだと分かるとすぐに去ります
10:47その行動から見てダイオウイカの狩りの方法や主な獲物についてどんなことが分かりますか
10:57この映像はダイオウイカが積極的に獲物を追いかけることを示しています
11:035分間餌の跡をついてきています
11:07積極的なハンターならエネルギーが必要ですからたくさん食べるでしょう
11:13潜水中に大きなアメリカ大若い蚊を見たことがありますが
11:17彼らは同じアメリカ大若い蚊をよく獲物にしていました
11:22ダイオウイカも同じように共食いをするんでしょうか
11:27あり得ますね
11:28ダイオウイカのような深海の生き物は食べられるものなら何でも食べます
11:34同じ種でも自分より小さければ絶好のご馳走です
11:38それが深海の生存競争です
11:41スペインの海岸に打ち上げられたダイオウイカの死骸に
11:49激しい戦いの痕跡が見つかったことがあります
11:53傷跡を調べたところ別のダイオウイカに襲われて
12:00致命傷を負ったらしいことが分かりました
12:07ダイオウイカは他の生き物を襲うだけでなく
12:10共食いもいとわないハンターだったようです巨大で有名な生き物であるにもかかわらずその深海での生態が映像に収められたことはたった2回しかありません
12:28最大の動物 シロナガスクジラ
12:34体長30メートル 体重200トンにも達します
12:40でも目にする機械は稀です
12:43しかし海は知られざる神秘に満ちています
12:48長い歴史の中でシロナガスクジラを超える巨大生物がいたかもしれないんです
12:55地球上で最大の生き物たちを育んできた海
13:04ダイオウイカのように暗い深海に隠れているものもいれば
13:11クジラのように水面近くで生きるものもいます
13:16ではなぜこれほど大きくなれるのでしょう
13:20自分よりはるかに小さな生き物を食べて大きく成長するものもいます
13:26しかし過去の海にはシロナガスクジラに匹敵する大きさで
13:33なおかつ童貌なモンスターも存在していました
13:37生き物が巨大になればより大きな獲物を捕らえられるようになります
13:46ただしそのためには強力で鋭い歯が必要です
13:51これはホホジロザメの歯です
13:54ナイフのように尖り縁はいざぎざです
13:58ホホジロザメは全世界の海に生息しています
14:03最大で体長6メートルを超え体重は2トンにも達します
14:09300本もの歯を持つ海の殺し屋です
14:13ではこの化石をご覧ください
14:19この歯はホホジロザメの絶滅した親戚
14:24メガロドンのものです
14:26メガロドンはおよそ360万年前まで生息していました
14:34現在残っている化石のほとんどは歯だけですが
14:39その歯の大きさは最大で18センチにもなります
14:43同時期にホホジロザメの祖先にあたるサメも存在していましたが
14:51遠い親戚であるメガロドンはそれよりはるかに巨大でした
14:57似た形ながらずっと巨大な歯を持ったメガロドンは
15:05顎の大きさも地球最大級だったでしょう
15:09当時の海にも巨大なクジラが生息していました
15:14メガロドンは彼らを餌食にする力を持っていたのでしょうか
15:19ロンドン自然史博物館にその答えとなる化石があります
15:26古生物学のキュレーターエマ・バーナードが見せてくれました
15:30これは550万年前のクジラの骨の一部です
15:36体長は7、8メートルあったと考えられています
15:40かなりの大きさです
15:42この骨は全体に奇妙な跡があります
15:46噛まれた跡です
15:48その深さや幅から考えて非常に大きな捕食者でした
15:54それがメガロドンだと思われるのです
15:58ロンドン自然史博物館には世界中から集められたメガロドンの歯が300本以上収蔵されています
16:14メガロドンという名前は大きな歯という意味です
16:20この成長した個体の歯を見てみるとまさにそうですね
16:24縁にはノコギリのようなギザギザが並んでいて
16:28ナイフの歯のような役割を果たします
16:31メガロドンの歯はいわば探検とステーキナイフが一体化した殺傷力の高い武器だったんです
16:41獲物に噛みつくと歯はしばしば骨にまで達したでしょう
16:47サメの骨は柔らかい軟骨でできているため化石として残ることはまれです
16:57メガロドンもそうでした
16:59そのためメガロドンの大きさは現在のホホジロザメの体型をそのまま拡大する形で推定され
17:10体長は14メートルほどと考えられていました
17:14しかしその常識は覆ろうとしています
17:201843年にベルギーで発見されたメガロドンの背骨の化石を
17:262022年に再調査した結果驚くべき発見があったのです
17:32メガロドンに詳しい古生物学者のジャック・クーパーは
17:43背骨の化石をもとにこの巨大生物の復元に挑みました
17:48そして恐ろしい真実を発見したのです
17:52サメは生涯にわたって歯が何万本も生え変わるので
18:00歯の化石は比較的多く発見されますね
18:03でも背骨の化石はまれなんですよね
18:06水骨一つでも滅多に見つかりません
18:09ベルギーでまとまって発見された化石は世界で唯一のものです
18:15並べて復元すると長さは11メートルあり
18:19そこから体長は16メートル近いと判明しました
18:23ですがそれでも最大ではなく
18:26最新の推定では20メートル以上とも考えられています
18:30すごい
18:31ではそのサイズ感を見てみましょう
18:355メートル
18:40これくらいのホホジロザメと一緒に泳いだことがある
18:44そして6メートル
18:46ここを越えると現在の海に生息する世界最大の魚類である
18:52ジンベエザメのサイズに近づいていきますね
18:5612メートル
18:57ジンベエザメの大きさです
18:59ジンベエザメはプランクトンや小魚を食べる穏やかなサメですけどね
19:08メガロドンは毎日10万キロカロリー近くを摂取していました
19:13これはホホジロザメが必要とするエネルギーのおよそ20倍です
19:187、8メートルのクジラも捕食していたでしょう
19:22驚いた
19:24では大きさをさらに測りましょう
19:2816
19:3116メートル
19:35これが背骨から推定したメガロドンの体長ですね
19:39はい、これでホホジロザメの約3倍の大きさです
19:44でもあのメガロドンはまだ成長の過程でした
19:4817、18、そして信じられないことに
19:5820メートルに達しました
20:02すごい
20:05最大級のメガロドンのサイズは人間の背丈10人分よりさらに大きいほどです
20:12巨大であることにはどんなメリットが?
20:19まずは競争相手が少ないことです
20:22メガロドンは非常に大きな獲物を捕食できました
20:26他に同じ獲物を狙う生き物は多くありませんから
20:30競合しないわけです
20:32口の大きさもきっとすごかったんでしょうね
20:39口を開くと縦幅は1.8メートル以上になりました
20:44私たち2人が並んで立った状態で
20:47すっぽり収まるほどの大きさです
20:50恐るべき捕食者メガロドンの実像が明らかになってきました
20:58メガロドンはほとんどの魚と異なり
21:04体温を維持できる高温動物だったと考えられています
21:09そのため他のサメよりも早く
21:12より広範囲を移動し獲物を探すことができました
21:16そしてクジラをも捕食したのです
21:22体長8メートルのクジラを
21:285、6回噛みつけば仕留められたでしょう
21:31まさに海の帝王です
21:36しかし今彼らは存在しません
21:40メガロドンは絶滅してしまったのです
21:44巨大生物には弱点があります
21:49巨大な捕食者は獲物が豊富にいる間は
21:54海の支配者でいられます
21:56ですが獲物が減ってしまったら
22:00巨大であることが不利になります
22:04気候の変化によって
22:12メガロドンが獲物としていた生き物が減少すると
22:16この巨大なハンターは短期間のうちに姿を消してしまいました
22:21しかし巨大化の道を歩む生き物がいなくなったわけではありません
22:34メガロドンの絶滅により
22:39海には新たな巨大生物が誕生する余地が生まれました
22:43そしてヒゲクジラの仲間が進化し
22:47現代のように巨大となったのです
22:50ヒゲクジラたちの食事は
22:54メガロドンより効率的です
22:57小魚やオキアミなどの小さな獲物を
23:01一度に大量に飲み込み
23:04海水だけを排出するのです
23:06今ではこうして巨大化したクジラには
23:13獲物の量以外に成長の妨げはありません
23:17成長した個体が捕食者に脅かされることは
23:21ほぼなくなりました
23:23しかしそんな彼らを襲う深海の怪物がいます
23:29マッコウクジラ
23:31シャチ
23:33そしてホホジロザ
23:35海の巨人たちに丸い傷ができています
23:40この奇妙な傷は
23:43彼らを襲う謎の捕食者が
23:46深海に潜んでいる証拠です
23:48人間が襲われた例もあります
23:53一体どんな凶悪な怪物がいるのでしょうか
23:57謎を解くため
24:00海洋学者のジェスロ・レディングに話を聞きました
24:04奇妙な傷で自然にできたものではありません
24:11大型の捕食動物にも見られます
24:15例えばマッコウクジラの体にもです
24:19同じような傷がシャチにも
24:22ホホジロザメも何かが襲っています
24:28国立海洋学センターの収蔵庫に
24:36襲撃の犯人とみられる生き物の標本がありました
24:40それがダルマザメです
24:44クッキーカッターシャークとも呼ばれます
24:48これです
24:50口の形は微笑んでいるかのようですが
24:55実は恐ろしい秘密を隠しています
24:58体長は50センチほどですが歯は狂気です
25:03ダルマザメは体の大きさに対して最も大きな歯を持つサメです
25:10口が大きく開き円の形を作ります
25:14下あごのたくさんの大きな歯は全部つながっていて
25:18ノコギリのようになっています
25:20このダルマザメは昼の間
25:25深い時には水深3,500メートルまで潜っています
25:29そして夕暮れ時に3,000メートルも上昇し
25:36水面近くで食料を探します
25:39その生態は謎が多く
25:41噛みつくところもまだ撮影されたことがありません
25:45大きく開く顎もその秘密の一部に過ぎないのです
25:50一見茶色くて地味ですが実は光ることができるんです
25:56お腹の側から青い光を出します
26:00体の皮膚全体に反転があるのが見えます
26:04これが光を発生する器官です
26:08ただし首の周りにはありません
26:11この光は狩りに利用されます
26:16自らの輪郭を小さく見せて獲物をおびき寄せるというのです
26:22深い海にいる捕食者の目に
26:26上にいる獲物がどう見えるかを再現します
26:29光で影がはっきり浮かび上がります
26:34しかし光を発すると見た目が大きく変わります
26:40首周りの黒い部分だけが目立ち
26:43それが小さな魚のように見えるのではと考えられています
26:48ダルマザメは自分を小さく見せることでターゲットを誘い込み
26:55小魚だと思って近づいてくる大きな生き物がいたら
27:00すかさずそれに噛みついて肉をえぐり取っているのかもしれません
27:04刈られる側から刈る側へと一転するのです
27:13カミソリのように鋭いノコギリ状の歯で獲物に噛みつきます
27:22そして口を密着させてから円を描くように回転します
27:28すると獲物の体からきれいに円の形で肉が切り取られるのです
27:35ダルマザメが獲物を狙うのは海面近くです
27:42しかしここで再び深海に目を転じ
27:46もう一つの巨大生物を見てみましょう
27:54深海の巨人とも呼ばれている生き物です
27:57それがこのニシオンデンザメ
28:05グリーンランドシャークです
28:08水温が氷点下に達することもある
28:11北大西洋の深海に暮らしています
28:15食料も少ないはずの環境ですが
28:20ニシオンデンザメは最大で体長7メートルに成長し
28:25寿命は500年にも及ぶと言われます
28:29つまりシェイクスピアの時代から泳ぎ続けている個体がいるかもしれないのです
28:35彼らは地球上で最も長生きする脊椎動物です
28:41この長寿を可能にしているのはゆったりとした生き方です
28:47エネルギーの代謝を極端に抑えゆっくり動きます
28:52そのため大人になるのに150年かかるのです
28:57ニシオンデンザメは巨大です
29:03しかし深海での巨大化の最も極端な例は
29:07サメでもイカでもありません
29:10イギリス国立海洋学センターのタミー・ホートンは
29:17深海の巨大な生き物に精通しています
29:21しかし彼女が見せてくれたのは
29:24とても小さな生き物でした
29:26浅い海に住んでいた海雲です
29:31実際には雲とはあまり近い種ではありません
29:35体の大部分が足です
29:39胴体はほとんどなくこの部分だけです
29:42あとはみんな足です
29:44この個体はメスなんですが
29:46卵は足の内部に詰まっているんです
29:49たくさん並んでいますね
29:52本当だ!すごいですね
29:55ここにあるのは?
29:58少し拡大してみましょう
30:00胴体にスペースが少ないので
30:04消化器官や生殖器官などの内臓が
30:07足の中に伸びているんです
30:09大きさは小指の爪ほどですね
30:13でも大きいのもいるんです
30:16巨大な海雲がいるのは深海です
30:21重いですよ
30:25本当だ!
30:28水深2600メートルにいたもの?
30:30大西洋の真ん中です
30:32海雲が巨大化するとこうなります
30:37すごいな!
30:42深海だと大きくなるんですか
30:44あの小指の爪ほどの小さな海雲がこんなに巨大に
30:49すごいですよね
30:50これまでに見つかった最も大きな個体は
30:54足の長さが70センチありました
30:5770センチ!
30:59そうです
31:00触っても?
31:02ええ!
31:02同じ仲間なのにスケールが違う
31:09深海に住む生き物は浅い海に住む近い種の生き物より700倍も大きくなることがあります
31:20中にはもはや異世界から来た存在のように見えるものも
31:25これは大王愚策虫です
31:32うわぁ!何ですかこれは!
31:44エイリアンみたいだ!
31:46頭脚類と呼ばれる種の最大のものです
31:52超巨大ダンゴムシ?
31:56え?
31:58なんだか悪い夢に出てきそうですね
32:05信じられないほど大きい
32:08ちょっとグロテスクですが面白いです
32:11そうですね
32:15浅い海にいるのはもっと小さい?
32:18ええ
32:19これが同じ仲間
32:21スケールが全然違う
32:23これは浅い海に生息しているタイプのものです
32:27そちらのように巨大なのは深海にしかいません
32:33巨大化の比率で言えば深海でも最大級と言えるでしょう
32:41深海の生き物たちは極端に大きくなるんですね
32:45深海で巨大化が起こる理由について何か仮説はあるんでしょうか
32:51深海の特徴は食料が非常に乏しいことです
32:57生き物たちは長い間何も食べないのに耐えたり
33:01食料を探して長距離を移動しなければなりません
33:05そうした環境では体が大きいことが生き抜くのに有利なんです
33:09逆に思えますが
33:11食料が少ないのに巨大になるというのは不思議に感じますが
33:15彼らは非常にスローペースで生活していて
33:19エネルギーの代謝も遅いのです
33:21つまりゆっくり生きることが長寿につながると
33:25エネルギーの代謝が低くゆっくり生きることで
33:35限られた資源を最大限に活用し巨大に成長できるようです
33:40現代において地球最大の生物シロナガスクジラは平均的な体長24メートルほど
33:53長い間史上最大の生物だと考えられてきました
33:59しかし恐竜の時代に海の底だった地層の中に
34:06その常識を覆すかもしれない手がかりが見つかっています
34:11海の巨大生物たちの世界は
34:14まだまだ解明されていない謎に満ちています
34:18一つの大きな疑問があります
34:22巨大化に限界はあるのでしょうか
34:25実は史上最大の生き物は大昔の海に暮らしていたそうなんです
34:36そこにはかつて巨大な爬虫類が生息していました
34:40その化石が発見されたのがイギリスの南海岸
34:44通称ジュラシックコーストです
34:50太古の海の怪物です
34:52これもそう
34:54恐竜の時代にいた海の爬虫類の仲間
35:00魚竜の化石です
35:03姿はまるで現代のイルカのようですね
35:07長く伸びた口がよく似ています
35:13中には塩水系の歯が並んでいます
35:16イカや魚のような素早くて滑りやすい獲物を捕らえるのに最適です
35:22そして実際に何を食べていたかも分かります
35:27最後に食べたものが胃のあたりに見えるんです
35:31小さな魚の骨ですね
35:33現代のイルカと食べるものも同じでした
35:37魚竜は肺で呼吸しました
35:41イルカと同じく陸上にいた祖先から進化し
35:45水中生活に適応したのです
35:48そして両者とも流線系の体へと進化していきました
35:55特定の環境に適応した結果
35:58異なる種の生き物同士がよく似た形になっていく
36:02修練進化と呼ばれる現象です
36:06ここにあるのが前足で巨大な比例と進化しています
36:11これによって浮力を得たり
36:13火事を取るような動きができたのでしょう
36:17そして驚くべき特徴があります
36:21魚竜の一部の種は目の穴の大きさが
36:25脊椎動物で最大でした
36:27巨大な目はわずかな光も感知でき
36:30深海でも素早く動く獲物を取るのに
36:33役立ったでしょう
36:43最も大きな目を持つ種では
36:46500メートルの深さでも狩りができたと
36:49考えられています
36:52魚竜は最強の海の捕食者でした
36:56これはまだ若い個体でさらに大きく成長できました
37:01近年イギリス南西部のサマセットで
37:08アマチュアの化石愛好家が大きな化石を発見しました
37:12それは巨大な生き物の骨の一部とみられるものでした
37:17絶滅した海生爬虫類の専門家であるディーン・ロマックスはこの発見の重要性をすぐに見抜きました
37:29これは大型の魚竜のあごの骨の一部です
37:38完全にそろってはいませんが並べると2メートル以上の長さになります
37:45これは小型の魚竜の頭の骨です
37:50体長は2メートルくらいだったでしょう
37:53これと形を比べることで見つかったのは下あごの骨だったと分かります
37:59化石の比較から大型の魚竜の頭の骨の大きさを推定しました
38:07これはあごの骨の一部にすぎません
38:11もし頭の骨が完全にそろったならばその大きさは5メートルに達するかもしれません
38:19まさに巨大生物です
38:222024年ロマックスの研究チームはこの新たに発見された怪物をイクチオタイタンと名付けました
38:33そしてあごの骨を詳しく調べるとまた驚きの発見がありました
38:41骨は外側だけではなく内部からも多くのことが分かります
38:46サンプルを採取し骨の内部の構造を調べました
38:51ここに見える特徴から言えるのはこの個体がまだ若く成長中だったことです
38:58いわば大人になりかけたティーンエイジャーの頃だったと推測されます
39:03ではイクチオタイタンはどれくらい大きかったのでしょうか
39:09あごの骨をもとに全体のサイズを推定し四角化しました
39:1421、22、私たちの推定では全長およそ25メートルです
39:21これは平均的なシロナガスクジラよりも大きく史上最大の生き物の候補に入ります
39:35しかもこの個体はまだ若かったため成長すれば体長30メートル以上になっていたかもしれません
39:42ロマックスの計算が正しいとするとイクチオタイタンの大きさはこれまで史上最大の生き物と考えられていたシロナガスクジラを超えることになります
40:07海の巨大生物たちはどうしてこれほど成長できるのでしょうか
40:12一つの鍵は海水が重い体を持ち上げてくれることです
40:19この水を入れた風船を巨大な海洋生物だとしましょう
40:24海の中では体は海水の浮力に支えられます
40:29そのためエネルギーを消費せずに浮かんでいられるんです
40:33では水の外ではどうでしょうか
40:38体重を支えるために強い骨格が必要で動き回るのにも膨大なエネルギーを消費します
40:46大きくなりすぎれば自分の重さを支えきれず潰れます
40:52結果として巨大な生き物が生息できるのは海の中
41:03特に深海は生き延びやすいということになるのです
41:08巨大化の利点はいろいろありますが
41:11一つはほとんどの捕食者の標的とならないことです
41:17海中では体が大きい方が効率的に移動できます
41:21魚竜は目の構造から深海への潜水に適応していたことが分かりました
41:29また体が大きいほど酸素を多く取り込めるため
41:33より深くより長く潜れます
41:37事実マッコウクジラは90分以上息を止めることができます
41:44つまり彼らは巨大になることで
41:50ほとんどの動物がやってこられない深海でも
41:54自由に狩りができるようになったのです
41:57今日の海の巨人であるクジラは
42:04一生の間に世界中の海を移動します
42:08巨大生物がそこにいれば
42:13それぞれの海域で栄養の循環が進み
42:16プランクトンの増殖が促進されます
42:19彼らはこうして海の食物連鎖に貢献するとともに
42:28その頂点に君臨しているのです
42:31クジラ以外の巨大生物もみな
42:43生態系を支える大きな役割を担っています
42:48メガロドンから現代のクジラまで
42:52彼らは海にはなくてはならない存在なのです
42:58海は生命のゆりかごです
43:04地球の歴史を通じて
43:09海は常に最強の捕食者や
43:13最も巨大な生物を生み出してきました
43:16海の神秘を追い求める私たちの旅は
43:24これからも続いていきます
43:26海の神秘を追い求める私たちの旅は
43:43海の神秘を追い求める私たちの旅は
43:51海の神秘を追い求める私たちの旅は
43:5690年前にドイツで発見されたある人骨
44:02当時男性と判断されたその骨はやがて女性と分かり
44:08しかも古代のシャーマンだった可能性が出てきました
44:11彼女が生きたのはおよそ9000年前
44:14社会でどんな役割を果たしていたのでしょうか
44:18地球ドラマチック古代ドイツ謎の女性シャーマン
44:23新海から熱帯まで世界の海を席巻するイカ
44:35最新研究から驚きの生存戦略が明らかに
44:41イカは皮膚でコミュニケーションしています超個体資格
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